適性検査の必要性

採用選考やオンボーディング、配置配属で使われる適性検査。ここでは、なぜ「適性検査が必要とされるのか」を紐解いていきます。

適性検査とは

職業適性、知能、運転能力、体力、心理テスト、学力試験など様々なテストがありますが、ここでは、主に採用選考や人事管理の場面で使用されるテストを「適性検査」として扱います。

使用の目的

適性検査使用の目的は主に2つです。

  1. 採用や人事・教育の場面で、全体の集団と比較して人物を評価したり、
    社内選抜や配属・教育などに活用する
  2. 受検者自身が自らのキャリアを考えたり、自己理解による就職活動に活用する

また近年では、ストレス耐性やメンタルチェックに活用したり、社員のキャリア形成支援の一助として活用するケースが増えています。

発展背景

適性検査は、20世紀以降の急速な工業化・都市化の中で、新しい仕事が生まれ、それとともに様々な職業への適性が研究されるようになったことや、一方で、戦争前後における新兵の選抜や配属・教育、復員後の就職指導や心のケアなどへの利用のため研究が進んだことが歴史的背景にあります。

最近の利用傾向

日本においては、戦後1947年に始まったGATB(厚生労働省編一般職業適性検査)が先駆けとされています。

能力を測るものやパーソナリティを測るものが一般的ですが、最近では「ストレス・メンタル」「キャリア」などの時代ニーズに応じた適性検査も増えてきました。また、企業の求める人材像も変化してきており、高度成長期には誠実性や協調性の重視が主流でしたが、下表にみられるように近年では主体性やチャレンジマインド、意思伝達力、ストレス耐性なども重視する傾向が伺えます。

他方で、大学全入時代を迎え、ゆとり教育の下、学校名だけでは人物の能力を担保することが難しく、適性検査を活用し、総合的な人物の把握が求められるようになっています。

新入社員についての企業側評価

新入社員についての企業側評価

採用と適性検査

人物の採用については、以下の図のように考えることができます。

入社者の区分け

人材を募集した際の応募者群を母集団とします。
母集団を「採用・不採用」と「入社後活躍度(※)の高低」
で区分すると、以下の4つの集団に分けることができます。

A: 採用 × 活躍度高  採用してよかった集団
b: 不採用 × 活躍度高 採用すればよかった集団(消極的ミス)
c: 採用 × 活躍度低  採用しなくてよかった集団(積極的ミス)
D: 不採用 × 活躍度低 採用しなくてよかった集団

ここがポイント

実際の入社者はA +cの群ですが、
理想の採用集団はA +b群にあります。

※入社後活躍度
採用した人材が、期待通り・期待以上に高い業績を上げるなどの活躍をしている状態

母集団の質を上げる

望ましい母集団を形成することがポイントになります。

母集団の質を上げる

例えば、集団Aと集団Dの差や違いを傾向分析することで、よりターゲットである集団Aに対する訴求ポイントが見えてきます。
それをホームページや募集サイトの原稿などに活用し、集団Aが大きくなるよう、次の母集団形成に活かすことができます。

ここがポイント

採用活動が終了しても、それきりで終わらせることなく、結果をふり返り次に活かすことが大切です。
その際に、テスト結果データを利用することをおすすめします。

採用ミスを減らす

採用ミスを減らし、より良い採用を行うためには、集団bと集団cの二つのミス(消極的ミスと積極的ミス)をいかに減らすかがポイントとなります。

採用ミスを減らす

集団bを減らすには、これまで不採用にしていた群の中から、「活躍人材を発見する」ことが必要です。

集団cを減らすには、これまで採用していた群の中で、「活躍できる人材かどうかを見極める」ことが必要です。

ここがポイント

面接や学歴・履歴書では見きれない潜在的な能力や人物の素質を見ることで、「発見」と「見極め」の精度を上げていきます。そのサポートツールの1つが適性検査です。

適性検査の利用メリット

適性検査を利用することで、採用選考時、人事の手間と時間を軽減させることができます。

企業にとって「欲しい人材・合う人材を採用する」ということは、どうしても時間や手間がかかります。適性検査を活用することで、効率的な選考を実現できます。選考プロセスの中で、時間・手間をかける部分とそうでない部分を分け、欲しい人材にはじっくりと選考の手間をかけることが理想です。また、適性検査の結果が合否判断の一助となることで、選考精度を高めることができます。

面接1次・2次のみ選考過程
適性検査+面接1次・2次の選考過程

また、テスト結果を社員の育成や配属の参考資料にすることができます。さらに、受検する側にとって、自らの成長やキャリア形成を考えるときの手がかりにすることもできます。

自社にあった適性検査とは

自社にあった適性検査を選ぶポイント4点

  1. 採用や社員の育成など、使用目的に合わせて選ぶ
  2. 検査時間や実施形態は活用場面に合わせて選ぶ
  3. 結果が分かりやすく、社内で共有しやすいものを選ぶ
  4. 論理的妥当性をもち、統計的な処理に基づいたものを選ぶ

1. 採用や社員の育成など、使用目的に合わせて選ぶ

テストにも様々な種類があります。たとえば採用目的であっても、いわゆる学力や常識試験は、その受検者が現在持っている知識や学力を知ることはできますが、素質・可能性としての「知能」を見るには不向きです。
性格検査の場合も、企業の求める人材観に照らした性格を測るものでないと、選考には不向きと言えます。
また、職業の専門的な知識やスキルを測るテスト、コミュニケーション力など基本的なビジネス能力を測るテストなど企業が選考時に重視するものによって、選択するテストが異なります。

2. 検査時間や実施形態は活用場面に合わせて選ぶ

実施形態も大切です。実施する側・受検する側の双方にとって負担が大きくならないよう、検査時間の短いものや実施形態の多様なものも選択時のポイントです。
選考プロセスの中のどのタイミングで実施するのか、どこで実施するのか、Webがよいか質問紙がよいか、実施場面を想定して適性検査を選択しましょう。

3. 結果がわかりやすく、社内で共有しやすいものを選ぶ

結果が分かりやすく、見やすいものをおすすめします。結果の分かりやすさ、理解のしやすさという点においては、グラフや図、コメントなどの表記は見てすぐ分かる、という長所があります。
また、数値での表記は採用結果の振り返り・経年の比較や社員の傾向分析などをするときに便利です。加えて、求める人材像を明らかにして、テスト結果のどこを重視するのか話し合いをしておくことが必要です。
そのため、採用であれば選考プロセスに携わる担当者が等しく検査結果を共有できるかどうかも、テスト選択の判断材料のひとつです。

4. 論理的妥当性をもち、統計的な処理に基づいたものを選ぶ

データのメンテナンスが行われているものを選びましょう。買い取り型テストなどの場合、データの更新・調整等がされにくい場合があります。十数年以前の基準を基にテスト結果が算出されている場合、求める人材像に合致したテスト結果が得られないことが懸念されます。
統計的処理に基づいてデータを更新または調整しているテストを選択する事をおすすめします。